平成25年度科学研究費助成事業(科学研究費補助金)基盤研究A
研究の目的
校内暴力、いじめ、学級崩壊等、学校教育を揺るがさせる秩序形成をめぐる問題の解決として、従来、整合的な外的秩序への回収という規律・管理として教育が考えられていた。こうした秩序が揺らぐ事態を、子どもの存在をかけた新たな秩序形成への試行(力動的秩序形成)として捉え直し、これまでと異なった問題解決への問いや方法を検討する。すなわち、
(1)教育学や心理学や社会学といった学問領域を横断する多次元的研究によ り、学校、地域、社会、家庭という教育空間におけるゆらぎと新しい秩序形成の 実態を明らかにする。
(2)その際、各教育空間における電子メディアの広範な影響の実態を解明する。
(3)以上の成果をもとに、力動的秩序形成を促進する、教育空間間相互の間で の恊働を実現するシステムや支援の在り方の道筋を呈示することをめざす。
本年度(~平成26年度3月31日)の研究実施計画
学校、地域・社会、家庭という、子どもが関わる教育空間において、以下の5つのプロジェクトチームを編成し、専門を異にする研究者がともに関わり、解明(A)→関わり(B)→新たなデザインの提示(C)という、アクションリサーチをおこなう。
①学校改善プロジェクト : 矢野(教育人間学)、西平(臨床教育学)、田中(教育方法学)、楠見(認知心理学)、山名(教育哲学)、大山(臨床心理学)
②不適応対応プロジェクト : 大山、桑原(臨床心理学)
③家族研究プロジェクト : 稲垣(教育社会学)、桑原
④グローバル化対応プロジェクト : 南部(比較教育学)ら
⑤交流空間プロジェクト : 渡邊(生涯教育学)、西平。
これらのプロジェクトは、独立して遂行するとともに、コラボレーション・ユニットが中心となって、相互の連携を図る。
また日本の状況を相対化してその特徴をより明確にするとともに力動的秩序形成を理解する手がかりを得るために、国際比較を通じた研究の深化を目指す。これにはすべての研究分担者が関わる。なお、調査やフィールドワークを行う際は事前に調査計画に関して学内の倫理委員会の承認を得、目的を当事者に十分に説明し同意を書面で得る。その他最大限の倫理的配慮を行う。
【平成25年度】
3つの教育空間それぞれで設定したフィールドにおいて、連携機関と協力しつつ、各空間における秩序のゆらぎの現状を明らかにすること(A)に重点を置く。
すでに一定の関わりを持つフィールドでは、力動的秩序形成が可能となる可能性について検討を始める(B)。
【平成26年度】
これまでのプロジェクトを継続するとともに国際比較を通じた研究の深化を図る
【平成27年度】
外部評価を含む中間評価を実施し適宜計画の修正を行う。また、コラボレーション・ユニットの機能を強化し、各プロジェクト間の連携を強化し新しい力動的秩序形成の解明を目指す。
【平成28年度】
ワークショップやシンポジウムを実施することにより研究成果を外部に発信する。
その際に海外からの講師やシンポジストを招聘する。
【平成29年度】
まとめの作業を行い、再び実践フィールドへ還元し、最終的な提言へと向かう。
著作の発行やホームページによって、成果を公表する。