福岡県立京都高等学校「京都研修」(実施報告)

 教育実践コラボレーション・センター学校教育改善ユニットでは2024年10月10日(木)~11日(金)に京都大学吉田キャンパス総合研究2号館において福岡県立京都高等学校「京都研修」を実施しました。

 

 本研修は、福岡県立京都高等学校の高校2年生に対して2021年度から毎年実施しているもので、高校生と大学生の交流、大学生活や大学での学びについての理解を深める場として開催されてきました。今年度は、10日に高校生と大学生の交流会、11日に模擬授業を実施しました。

 

 10日の交流会では、大学生1名と高校生10名のグループ3つに分かれ、交流しました。まずは、京都高校の卒業生でもある油田優衣さん(教育社会学研究室博士後期課程1年)からのビデオメッセージがありました。油田さんは、高校生活や当時の学び、進路を決めた経緯などを振り返った後、大学生活での心理学や社会学との出会い、そして、自身の問題意識や「やりたいこと」に向き合い続けた結果、どのような現在を過ごしているのかについて高校生たちに語りました。ビデオメッセージ視聴では、油田さんの語りに耳を傾け、心に響いた言葉をノートに書きとっている高校生の姿が印象的でした。

 

 その後の意見交換会では、高校生が大学・学部選びや受験勉強の際に生じた疑問を大学生に投げかけ、また大学生もそれらの質問に自らの経験を重ねながら答えていました。高校生にとっては、これから向き合うこととなる進路選択や受験勉強の励みとなり、大学生活をイメージするための場となったようです。また、大学生にとっては、自身が取り組んでいる学びや研究のルーツとなる自身の経験や思いを振り返る機会となり、その研究の意義やおもしろさをどう伝えるかを再考する契機となったようです。

 

 11日の模擬授業では西岡加名恵教授(教育・人間科学講座)により、「学校のカリキュラムを考える」というテーマで授業が行われました。高校生に小・中・高等学校での学びを振り返ってもらい、彼らが経験したカリキュラムについての意見を引き出しながら、現行の学習指導要領や学習指導要領改訂に伴う目標・授業・評価の変化に関して講義がなされました。具体例を交えて分かりやすく伝えられ、高校生にとっては身近ではあるものの意識されていなかったカリキュラムについての理解が深まったようです。

 

 授業の後半には、生成AIの登場や地球温暖化、「多文化」化などの現代的課題を交えながら、今後の社会やこれからの学校について意見交換がなされました。高校生からは、探究的な学びや委員会活動がこれまでのカリキュラムの評価できる点であるが、男女差をなくすための取り組みやパフォーマンス評価の積極的導入による多面的・多角的な評価が今後、一層求められているのではないかとの意見がありました。講義で得た知識が自身の学校のカリキュラムや学びに関する気づきにつながり、意見交換を経て得た視点が、間接的に社会問題を解決していけるのではないかという期待につながっている様子も見られました。

参加した高校生から寄せられたコメントの一部を紹介します。

 ・まず一歩踏み出してみて、出会いの場を作り、ひとつひとつの出会いを大切にしていかなければならないということを学びました。

 ・油田さんがおっしゃっていたように、「人はよくも悪くもやったことしかできない」ので、たくさん勉強をして経験を積んでいきたい。

 ・油田さんの言葉から、最初から正解の道を選ぼうとするのではなく、選んだ道を正解にしていく努力をしていくことが大事だと学びました。

 ・障がいがある人に対して「普通の生活をしたいだろうな」と勝手に決めつけていたが、私の中で勝手に作られていた意識がどれほど身勝手なものだったかを感じた。

 ・大学生の先輩から「高校生は社会から良い意味で期待されていない。だからこそ何でもできる」という新しい視点を得ることができました。

 ・大学生の先輩のお話の中に、色々な考え方や視点を持つには、「そうありたい」という目標を持ち、変化の可能性を広げていくことが大切だとあった。目標を今すぐ決めるのは難しいかもしれないけれど、失敗したなあで終わらず、自分の次の生活に活かしていくことが重要だと考えた。

 ・大学生の先輩のお話を聞いて、大学と高校の違いについて詳しく知ることができました。例えば、大学は自由と共に責任がのしかかり、自分が頑張らないといけないということです。

 ・学校で受けているカリキュラムは様々な観点から考えられて組まれているということを学びました。

 ・「カリキュラムを作ること=未来を作ること」であり、人の命を救うこともあると知り、専門的な研究の重要性を学びました。

 ・授業で学んだことに対して「どうしてそうなるのか」「どんな解決策があるのか」と考える授業や課題がこれからの学校に必要なことだと学びました。

 ・私たちが書いているポートフォリオもためっぱなしはダメで、自分自身の成長につながる部分をピックアップすることが重要だと知ることができた。

 ・メタ認知能力を高めるためにポートフォリオ評価を取り入れるべきと聞いて、まずは今の自分に向き合い、少しでも早く自分の目標を正確に定めようと思いました。

 

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